骨粗しょう症の薬物治療

現在、多くの骨粗しょう症の治療薬が開発されており、服用方法(飲み薬、注射、点滴)や、その頻度(毎日、週1、月1、半年に1回、年1回)まで様々な選択肢があります。
当クリニックでは豊富な種類の薬をご用意しており、患者様の個々の病状などに応じて適切なものを提案致します。 骨粗鬆症の治療薬は主に、「骨吸収を抑制する薬」、「骨形成を促進する薬」、「骨の材料を補う薬」、「骨形成を促進・骨吸収を抑制する薬」の4種類に分類できます。
骨吸収を抑制する薬
ビスホスホネート製剤
ビスホスホネートは腸で吸収され、骨へ到達します。そして、骨を壊す破骨細胞に作用し、過剰な骨吸収を抑制します。すると、骨を作る骨形成が上回り、骨量が増えていきます。錠剤とゼリー製剤があり、飲み方が毎日、週1回、月1回のものがあります。
起床時に服用し、30-60分経ってから朝食をとってください。また、月1回の注射や点滴、年1回の点滴もあります。
この薬を長期間使用している患者様が抜歯する際に、極めて稀ですが、あごの骨が壊死する(顎骨壊死)ことがあります。
この薬を使う前に、歯科で歯周病の有無を評価してもらい、口の中を清潔に保つことが必要です。
選択的エストロゲン受容体作動薬(SERM)
骨に対しては、女性ホルモンのエストロゲン様の作用があり、骨吸収を抑制し、骨量を増加させます。一方、乳房や子宮に対してはエストロゲン様の作用は発揮しないため乳がんや子宮がんのリスクは増えません。
エストロゲンには血液凝固を促進する作用などもあることから、頻度は非常に稀ですが、副作用として静脈血栓塞栓症があります。
ヒト抗RANKLモノクローナル抗体製剤(デノスマブ)
破骨細胞の形成や機能を抑えることで、骨吸収を抑制します。骨量が増え、骨折リスクを減少させます。6ヶ月に1回の皮下注射です。
低カルシウム血症を防ぐため、カルシウムとビタミンDが入った薬を毎日飲む必要があります。ビスホスホネートと同様に、長期間使用している患者様が抜歯する際に、極めて稀ですが、あごの骨が壊死する(顎骨壊死)ことがあります。口腔ケアが重要です。
骨形成を促進する薬
副甲状腺ホルモン製剤(テリパラチド)
骨形成を促進して骨量を増やし、骨折を減少させます。専用キットを用いて、毎日あるいは週2回ご自身で注射する薬と、週1回病院で注射を受ける薬があります。
骨密度が著しく減少しているなど、骨折リスクの高い患者様に使用されます。注射を受けることができる期間は2年間です。
この薬よる治療が終わった後に、骨吸収を抑制する薬を続けることで、より骨密度を増加させて骨折リスクを減らすことができます。
骨の材料を補う薬
活性型ビタミンD3製剤
活性型ビタミンD3には、腸管からのカルシウムの吸収を促進して体内のカルシウム量を増やす働きがあります。骨量を増やし、骨折を予防します。
血液や尿の中のカルシウムが高くなりすぎることがあり、定期的に評価が必要です。
カルシウム製剤
食事によるカルシウムの摂取不足、乳糖不耐症の方、胃腸の手術後などに用いられます。多くは、他剤と一緒に使われます。
食事からとるカルシウムの量と合わせて1日1000mg程度が推奨されます。
ビタミンK2製剤
ビタミンK2は納豆に多く含まれるビタミンで、骨を作る骨芽細胞に作用し骨形成を促進し、同時に骨吸収を抑制することで骨代謝のバランスを整え、骨の質を改善します。
骨形成を促進・骨吸収を抑制する薬
ヒト抗スクレロスチンモノクローナル抗体(ロモソズマブ)
骨粗しょう症の新しい薬として、2019年に登場しました。骨形成を促進し、骨吸収を抑制して効果的に骨量を増やし、骨折を予防します。
骨密度が著しく減少しているなど、骨折リスクの高い患者様に使用されます。月1回の注射です。
注射を受けることができる期間は1回につき1年間です。この薬よる治療が終わった後に、骨吸収を抑制する薬を続けることで、より骨密度を増加させて骨折リスクを減らすことができます。