当院での糖尿病診療の特徴

●血糖、血圧、脂質の良好なコントロール、適正体重の維持、禁煙により、糖尿病の合併症の発症と進展を阻止し、健康な人と変わらない日常生活の質(QOL)の維持、寿命を確保することが目標です。
●可能な限り全員の患者さんに(低血糖なく安全に)、空腹時血糖値130mg/dL 未満、食後2時間値180mg/dL未満程度のレベルを目指します。
●インスリン分泌能や合併症、併存症を評価した上で、よりシンプルな内服に変更し、可能であればインスリンの回数を減らし、離脱も行います。
●高齢の方は厳格な血糖コントロールよりも、安全性を重視した適切なコントロールを行います。年齢、罹病期間、低血糖の危険性、サポート体制などに加え、認知機能、日常生活動作、併存疾患なども考慮して個別に設定致します。
●眼科、歯科はじめ近隣の病院、訪問看護ステーション、介護施設等と協力し、患者様の病態に応じて、適切に紹介し、疾患の改善に向けた最善の連携を行っていきます。
糖尿病とは
糖尿病は、膵臓から出てくるインスリンというホルモンの作用不足のために、血液中のブドウ糖が効果的に利用できず、長い間血糖値が普通より高くなっている状態です。
疲れやすい、のどが渇く、尿が多いなどの症状を伴うことがありますが、症状がないことも少なくありません。
原因は、遺伝因子に加え、環境因子 (加齢、過食、運動不足、肥満など)が関係します。 環境因子が関係することから糖尿病の方では、肥満症、脂質異常症、高血圧症、高尿酸血症・痛風も認めることが多いです。
糖尿病は大きく1型と2型に分けられますが、生活習慣を起因とする2型が95%以上を占めており、一般的に糖尿病と言われているのはこの2型糖尿病のことを指します。
日本では40歳以上の3人に1人が糖尿病、あるいは糖尿病に近い状態(予備軍)であると言われています。
糖尿病になりやすい人
以下の方は、糖尿病になる危険度が高いので注意が必要です。
かわつるん
かわつるん
1. 血縁者に糖尿病の人がいる
2. 血縁者に肥満、脳卒中、心臓病(狭心症、心筋梗塞)の人がいる
3. 甘いものや脂肪分を好んで食べる
4. 運動不足である
5. 外食が多い
6. 肥満である
7. お酒をよく飲む
大きく分けて2つのタイプがあります
糖尿病は大きく1型糖尿病と2型糖尿病に分けられます。
生活習慣が主な原因である2型糖尿病が糖尿病全体の95%以上を占めます。
1型糖尿病とは
1型糖尿病は、インスリンを分泌する膵β細胞の破壊により生じます。膵β細胞の破壊により、通常、インスリンは欠乏状態になります。
本来は外敵から体を守ってくれるはずの免疫が自分の膵β細胞を破壊する自己免疫性や、特発性などがあります。
小児 の1型糖尿病の有病率は 1 万人あたり 1.5~2人で、 好発年齢は8~12 歳、思春期にピークがあると言われています。
一方、大人になって発症することもあります。 欠乏したインスリンを補充するのが、治療の基本となります。
1型糖尿病の分類
劇症1型糖尿病
発症から1週間前後でインスリンの補充が必要となる、急激に進行する1型糖尿病です。 直ちにインスリン治療を受けなければ、重症化する可能性が高くなります。診断時は高血糖ですが、過去2-3カ月の血糖値を表すHbA1cは高くないという特徴があります。

急性発症1型糖尿病
発症から数カ月でインスリンの補充が必要になり、自分の膵β細胞を破壊する 自己抗体が陽性になることがあります。

緩徐進行1型糖尿病
数カ月から数年程度をかけて徐々にインスリンの分泌量が低下していくタイプの1型糖尿病です。 2型糖尿病との鑑別が重要であり、早期からのインスリン補充により膵β細胞を長持ちさせることができます。
2型糖尿病とは
食生活の乱れ、運動不足といった生活習慣、遺伝、ストレスなどが原因で起こります。
40歳以降に多く、40歳以上では10人に1人が2型糖尿病です。日本人の糖尿病患者の約95%が2型糖尿病です。
女性より男性に多い傾向があります。 特に初期にはほとんど症状がなく、頻尿や多尿、疲れやすさ、体重減少などが認められる場合には、かなりの進行が疑われます。
インスリン分泌の低下を主体とするものと インスリンの効きにくさ(インスリン抵抗性)を主体とするものがあります。
治療では、食事療法と運動療法を行います。
それでも十分な血糖コントロールができない場合には、経口の糖尿病薬、または必要に応じてインスリン療法を行います。
合併症とは
高血糖状態が長期間続くと、糖によって血管がもろくなります。
血管は全身にありますので、血管障害によるさまざまな合併症が発症します。
細かい血管の障害、主に神経、眼、腎臓が侵され、 糖尿病の三大合併症と呼ばれています。
合併症は初期には血糖コントロールで元に戻ることもありますが、進行すれば元に戻らなくなるため予防と早期発見がとても重要です。
細い血管の障害(三大合併症)
1. 糖尿病神経障害
2. 糖尿病網膜症
3. 糖尿病腎症
太い血管の障害
1. 脳梗塞
2. 脳卒中
3. 狭心症
4. 心筋梗塞
5. 下肢閉塞性動脈硬化症(下肢の血流障害)
6. 動脈硬化
7. 高血圧
その他
1. 骨粗しょう症
2. 感染症(歯周病、肺炎、水虫など)
糖尿病神経障害
長く高血糖が続くことで発症・進行し、主に両足の感覚・運動神経障害(足の裏のしびれ・痛み、こむら返りなど)、自律神経障害(発汗の異常、下痢・便秘、勃起不全、たちくらみなど)の症状があらわれます。
進行すると知覚が低下し、足壊疽(えそ)などの原因となります。 診断されてから時間が経つほど、発症しやすくなります。
予防・治療
 血糖コントロール
 神経障害に対する薬物療法(ビタミンB12、鎮痛剤など)
 生活習慣(禁酒、禁煙など)の改善
 フットケア(毎日足の傷、爪の変形、水虫・タコの有無をチェック。足を清潔にする)
糖尿病網膜症
糖尿病の罹病期間が20年以上になると80%以上に網膜症を認めると言われています。網膜症が重症化し失明をきたす方は、年間約4000人とされています。 また、白内障も糖尿病がリスクになると言われています。
予防・治療
 血糖コントロール
 自覚症状がなくても、定期的な眼科受診、眼底検査を受ける
糖尿病腎症
腎臓には細い血管がたくさんあり、ここで血液がろ過され、老廃物を尿として排泄します。長く高血糖が続くことで、腎臓の細い血管が障害されることで、糖尿病腎症を発症します。
初期では尿中にアルブミン、進行すれば尿中に蛋白が漏れ出ます。体の中に水分や毒素が過剰に溜まることになり、むくみ(浮腫)や尿毒症の原因となります。
糖尿病腎症が進行すると、人工透析が必要になります。
予防・治療
 血糖コントロール
 定期的な尿アルブミン、蛋白の評価 
 腎症各ステージに合わせた食事、運動、内服治療
骨粗しょう症
糖尿病でない方と比較し、1型糖尿病では約3〜7倍、2型糖尿病では1.3〜2.8倍大腿骨近位部骨折のリスクが高いといわれています。糖尿病で骨折が多い理由の1つとして、低血糖や神経障害、網膜症などを背景に転倒するケースが多いことが言われています。  
現在、骨粗鬆症は糖尿病合併症(糖尿病性骨粗しょう症)として認識されています。 骨密度に注目しがちですが、実は2型糖尿病では、骨密度は同じでも糖尿病がない方に比べて骨折のリスクが高いことがわかっています。
糖尿病性骨粗しょう症では、骨密度だけでなく骨質と呼ばれる、骨の構造や材質が関係していると言われています。
慢性的な高血糖による酸化ストレスや糖化ストレスによって骨に終末糖化産物(AGE)が蓄積されることで、骨代謝のバランスを崩し、骨がもろくなると考えられています。また、インスリンは骨芽細胞の増殖を促す骨形成に重要なホルモンですが、インスリン分泌能の低下やインスリン抵抗性が骨形成を抑制し骨をもろくすると考えられます。

また、骨折リスクを増加させる糖尿病治療薬もありますので、糖尿病治療薬の選択も重要になります。
HbA1cが7.5%以上の2型糖尿病の方は、糖尿病がない方に比べて骨折リスクが1.47倍高いと言われています。
また、2型糖尿病の罹病期間が10年を超えると骨折リスクが高まると考えられています。
血糖コントロール不良の方や病歴の長い方は、糖尿病性骨粗鬆症の予防・治療が重要です。
歯周病
長く高血糖が続くと、白血球の働きが鈍くなり免疫力が低下します。
細菌に感染しやすくなり、歯周病になります。
また歯周病になると、細菌から出される毒素により血糖が上昇し、悪循環に陥ってしまいます。
予防・治療
 血糖コントロール
 定期的に歯科受診をしましょう